タナカ

多分めっちゃタメにならない

バイトに行くまでが暇だったので小説風に書いてみる

雨が降っている。梅雨前線がやっとまともに働き出したか。自転車で通学している身としては困る。今日はそれでもいい。そんなことを考えながら、電車に乗る。満員電車に近い。東京のそれとは比べものにならないかもしれない。それでも何年も昔にはここが日本の中心であった。そう、僕は京都に住んでいる。電車に乗るとみんなスマートフォンと“にらめっこ”をしている。スマホ中毒を感じる瞬間だ。その光景を見ると「スマホに飲み込まれてしまうのでは」という危機感を感じてしまい、電車でスマホを使わないようにしている僕は、ガラスに映る自分とにらめっこをする。面白いことに、隣の女の子の髪の毛が腕にちょうどよく当たるせいで、本気でにらめっこをする羽目になっている。くすぐったい。力を抜くと顔がにやけそうだ。今の僕に「頑張りすぎてるんじゃない?」と優しく語りかけてくれる先輩は不要である。世の中には全力で取り組まなくてはいけないこともある。そう、今この瞬間を指す。とある駅に着くと満員だった乗客も全員の顔を覚えられるくらいの人数に減り、この頑張りからはすぐに解放された。少し行った駅で僕も電車を降りた。そしてバイト先へと向かう。また頑張る瞬間が現れる。難所は続く。しかも今日は忙しいという。絶望だ。しかし僕にとってバイトは希望でもあった。友達ができる、そして「頑張りすぎてるんじゃない?」と優しく語りかけてくれる先輩がいる。希望ととっても差し支えはない。しかし向かう足取りは重くなって行く。希望と絶望の入り混じった空間は何か掴みどころのない感覚を生み出す。それが足取りが重くなっている理由か。自分のことなのに理解できない感覚というのは本能に近いのかもしれない。目の前にドアがある。全てを投げ出す勇気があれば、ここで引き返すこともできる。だが僕にそんな勇気などない。そんな勇気のない人間は、希望と絶望に触れ、今日もまた給料を生み出す。